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マダニと貧血について

2010年03月15日

まだまだ冬の寒さを感じる日もあるが徐々に寒さも和らいできた。もうすぐ春がやってくる。

春、それはわんちゃんと生活している家族にとっては特に大切な時期がやってくるという季節である。

狂犬病予防接種、フィラリア予防(コラム「フィラリアのはなし」を参照)ノミ・マダニ予防。大切な家族を病気から守るためさまざまな予防が必要なシーズンの到来だ。

 

昨年もマダニによる病気に何度か遭遇することとなった。(生駒山系という土地柄も多分に関係しているのだが・・・)

それは、・・・

 

 

 

 

「ここ2、3日急にゴハンを食べないんです。元気もないし・・。普段はすごい勢いでゴハン食べるのに寝てばっかりで。」

まず、診察台の上でいつもどおり全身の身体検査をする。すると・・・。

口の中の粘膜が異常に白い。生き生きとしたピンク色の歯茎とは程遠い色である。血圧はしっかりある。心臓の音も問題ないレベルだ。血液検査をしながらすぐに原因をいろいろ考える。

ノミ・マダニ予防のフロントラインも他院で処方されていたが2ヶ月ごとにやっているとのこと。(2ヶ月・・・微妙だ。マダニは1ヶ月毎の予防が必要やし。)

「酸素室用意して!」検査をしつつ、とりあえずは酸素室を用意してそこで待ってもらう。

検査結果が報告される。明らかな貧血。すぐに血液を染色、顕微鏡で確認する。

血を造っている反応はあるがかなり弱い。貧血になって72時間くらいは反応が弱い場合はあるためこれだけでの判断は今のところ保留。その他の血液検査で肝臓や腎臓などの異常は認められなかった。尿は血のような色で血液が体内で壊されてしまって赤血球の中の色素だけが出てきている状態だ。あとは心臓、脾臓を含む臓器に腫瘍などの可能性がなければ溶血性貧血を起こす病気をしらべていけば良い。エコー検査では全て問題なし。

あとはダニから感染するバベシア検査のPCR(→参照)と自分の血液を壊す反応があるかのクームス試験をすぐに行うこととなった。(参照:ポリメラーゼ連鎖反応。プライマーを用いDNAを増幅することによって病原体などの種類を特定する方法。ヒトインフルエンザの時にもウィルスのタイプの判定に用いられた

 

結果はバベシア ギブソニ:陽性、クームス検査:強陽性だった。バベシアは血液検査で顕微鏡で確認できることも多いが今回のようにバベシアDNAを調べないと分からない場合も少なくない。

 

 

バベシアとは・・・

バベシアはマダニによって媒介され赤血球に寄生する原虫である。(人のマラリアも原虫。)マ

ダニの唾液の成分として免疫を低下させるタンパクがありそれと共にバベシアが体内に入ると感染が成立する。バベシアに感染してしまった赤血球の表面の形が若干変わる。それを自分の血液ではないと判断し自分の血を破壊してしまうというのがバベシアによる貧血の仕組みである。

 

早速、バベシアの特異的な治療にかかる。それに加えての赤血球への自己抗体に対する治療が必要かどうかは経過による。

結局、この子に関しては特異的治療に加え免疫調節も必要となった。入院第3病日からは順調に血液も造られ、当初10%程度まで下がった貧血の値も最終的には40%まで回復してくれた。とりあえずはひと安心!!

しかし、これで感染したバベシアが体内から無くなったわけではない。今の医学では感染を起こしたら完全に体から排除することは出来ない。しかも再発も多い感染性疾患だ。今後も家族の方と協力してひどい貧血を起こす前に対処する必要性があるだろう。

 

初診時の粘膜の色と治療に反応しての尿色の変化

 

20100314-1.png

*バベシアは命にかかわる重度の貧血を起こす感染性疾患です。その感染はマダニという吸血性のダニから起こります。確実に効果を発揮するダニ予防をしっかりすることで大事な家族をしっかり守ってあげてください。

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