口蹄疫のこと。

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宮崎が大変なことになってしまいました。口蹄疫です・・・。獣医の大学では牛や豚などの畜産動物の病気についても当然ながら勉強します。獣医師なら誰しも、今回のことを何も感じずに見たり、聞いたりすることは出来ないでしょう。

 

口蹄疫とはその名のとおり、口や蹄(ヒヅメ)に水泡のできる疫(伝染病)です。口や手足に水泡と言うとヒトの「手足口病」を思い浮かべる方もいると思いますが、この二つはどちらも「ピコルナウイルス」というウイルスが原因です。しかしウイルスは型(かた)によって感染する動物が限定されるものがほとんどなので、同じピコルナウイルスでも型がちがう牛や豚の口蹄疫がヒトに感染するということはまずありません。(ウイルスなのに豚や鳥からヒトに感染するインフルエンザや、哺乳類ならなんでも感染する狂犬病はそこが怖いんです。)

 

口蹄疫に感染した牛や豚は大人であればそれだけで死んだりはしません。しかし肉牛ならやせ細って、乳牛ならば乳が出なくなって、結果として経済的に大きなダメージとなるのです。だから他の地域にダメージを与えないよう、殺処分と言う方法がとられるのです。でも、でもですよ・・・。簡単に「全頭殺処分」とか言ってますが、それを実行する人たちの精神的な苦痛たるや・・・。

 

昔、大学のカリキュラムで北海道の牧場に1週間の泊り込みの実習に行ったことがあります。私がお世話になったのは某有名乳製品企業と契約しているとても大きな牧場で、乳牛を100頭以上飼育していました。朝は5時から夜遅くまでひたすら牛の世話、世話、世話でした。暑ければ木陰の多い柵に移動させ、涼しければよく運動ができる広い柵に連れて行きました。牛一頭一頭に個性があり、食事をちゃんと摂っているか、どこか怪我して帰ったりしていないかと、私たちが想像する以上に大切に世話されていました。もっとドライな、産業としての飼育を想像していましたが、ちゃんと普通に愛情が注がれていました。牛も私の誘導には従わないのに牧場の人の言うことはちゃんと聞いていました。

 

そんな牛を目の前で殺処分される気持ち・・・。そしてそれを行う獣医師も口蹄疫では牛や豚自身は死なないのに、そして何より動物を助けたくて獣医師になったのに・・・それを殺さねばならない辛さ・・・。想像しただけで涙が出ます。本当に心の底から、これ以上伝染が拡大しないよう祈るばかりです。