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椎間板ヘルニアのはなし

夜の900外来診察も終わり、入院の子たちのケアをしていると電話がなった。電話はいつもお耳のチェックに来ている5歳のミニチュア・ダックスちゃんのお家からだ。「今朝まで普通に元気だったんですが仕事が終わって家に帰ってみるといつもお迎えに出てくるのにこないんです。で、おかしいと思って見てみたら後ろ足が立たないんです・・・」

もちろん、こんなときは「すぐに病院に連れてきてください。」

 

実際に診察をしてみなければ分からないが「椎間板ヘルニア」の可能性がある。もちろん他の原因からの起立不能かもしれないが緊急であることは間違いなさそうだ。

 

椎間板ヘルニアが発生すると、神経麻痺や痛みによって、背中を触ると痛がる、足を引きずる、ふらつく、段差の昇り降りを嫌がる、起立困難、元気がなくなるなどの症状が現れ、放っておくと、一生にわたる下半身不随になる恐れがある。そうなるとオシッコすら自力では出来ないのだ。

犬種では、M.ダックスフンドが特になりやすくそのほかにビーグル、シーズー、トイ・プードル、ペキニーズ、パグなどにもよく見られる。

 

すぐに抱っこしてこられたがいつもの元気も無く確かに後ろ足が全く動かない。本人も不安でいっぱいなのだろう、お母さんにしがみつきブルブルと震えている。すぐに神経学的検査を行う。ふみ直り反射や痛覚反射、膝蓋腱反射などを注意深く調べていき脊髄のどの辺りでの異常があるか確認していく。身体検査ではどうも「第12胸椎~第2腰椎」あたりが病変部として疑わしい。その後、レントゲン検査を行うと「第13胸椎~第1腰椎」の間が他の部分と比べて狭くなっていた。

 

椎間板ヘルニアといっても痛みだけが症状のグレードⅠから完全麻痺で深部痛覚もないグレードⅤまで分類される。ヨロヨロしながら何とか起立できるグレードⅢ以上では早期の手術が必要とされている。

 

また、椎間板ヘルニアと同じような症状でも脊髄病変をおこす腫瘍や出血、梗塞、炎症もあり、それらについて判別したり手術計画をたてるためにもMRICTなどの検査が非常に有用となる。(もちろん手術適応にならない病変がみつかることもある)

 

今回は起立不能・歩行不能でかろうじて深部痛覚のみが残るグレードⅣだったため早急にMRI検査を実施したところ「第13胸椎-第1腰椎左側椎間板ヘルニア」と診断でき手術適応であったため手術を行う事となった。病院にてMRIの検査の結果を話すと飼い主さんはすぐに手術を決断された。おかげで手術は症状が出てから48時間以内というごく早期に行うことが出来たのだった。

 

その後、病院での安静とリハビリ、自宅へ帰ってからのリハビリをしっかり行うことによってダックスちゃんはみるみる順調に回復し、今では以前と変わらないしっかりとした足取りで元気な顔を見せてくれている。

 

椎間板ヘルニアの予防として、まずは食事管理をきちんと行い肥満にならないようにすること。激しい運動はなるべく控えるようにして、フローリングで滑らないようにカーペットを敷いてあげたり、階段などの段差をあまり昇り降りさせないようにするなど、なるべく脊椎に負担をかけないようにすることが大切です

そして「少しでもおかしいかな?」と感じたら出来るだけ早く病院へ連れて行ってあげてくださいね。

 

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東大阪のライカ動物病院