「シャンプーに行ってから体をかゆがってます。よく見たら真っ赤になってて・・・。」
「毎年、夏になるとお尻のあたりを咬むんです。」
「一歳くらいから眼とか口のまわりをよく床にこすり付けてたまに血が出るくらいになっちゃうんです。」
とか皮膚のトラブルで来院される患者さんは結構多い。
今回は皮膚炎の中でもやっかいな「アトピー性皮膚炎」について
① アトピーとは何なのか?どんな子がなりやすいのか?
② どうやって他の病気と見分けるのか?
③ 現在、どんな検査方法が可能でその検査にどんなメリットがあるのか?
④ その治療法とは?
今回はまず①、②についてお話していきましょう。
かゆみを伴う皮膚炎はいろいろある。原因となるものによってかゆみが起こりやすい部位もさまざまだ。
「かゆい!!」=「アトピー性皮膚炎」ではない。
かゆみを起こす皮膚炎としてはノミアレルギー、疥癬、犬ニキビダニ症、細菌の感染である膿皮症、マラセチア症を含む真菌症、食物性アレルギー、そしてアトピー性皮膚炎があげられる。もちろんそのほかにも天疱瘡などの自己免疫疾患、肥満細胞腫などの腫瘍性疾患などもある。
「アトピー」とは何なのか?言葉としては「奇妙」とか「不特定の場所」という意味です。つまりこれまでの皮膚炎とは異なるものでありアレルギー反応が基礎になっているが未だに全てが解明できていない皮膚炎なのだ。
アトピー性皮膚炎とはあくまでアレルギー性皮膚炎のひとつであり遺伝的な要因が関与していてアレルギーの原因が環境中にあり排除できないものである。また、セラミドが少ないなど皮膚のバリア機能の低下によるアレルゲンの侵入なども原因とされている。
遺伝的にアトピー性皮膚炎になりやすいとされているのは
柴犬・シーズー・フレンチブルドッグ・ゴールデンレトリバー・シェルティー・ボストンテリアなどであるがもちろんどの子も素因をもっている可能性がある。
どうやって見分けるのか?
直接、アトピー性皮膚炎と断定できる診断方法は無いためその他の原因がはっきりしていて治療できる病気をしっかりと治療して除外していく必要がある。
たとえば、ノミアレルギーならノミの駆除、疥癬やニキビダニなら駆虫、膿皮症なら抗生物質の適切な投与や抗菌シャンプー、真菌なら抗真菌治療をしっかりと行う。これがきちんと出来ていないのにアレルギー、アトピーと決め付けるわけにはいかない。
ただし「食物アレルギー」だけは簡単に除外できない。それには徹底的な食事管理が必要になる。新奇タンパクやタンパクが加水分解されたような療法食で始めることが多いがそれ以外のものは与えずにおくことが必要である。しかも、最低でも2ヶ月くらいは続ける必要がある。つまり「食事変えたけど変わらんから・・・やめた。」じゃ何も判断できない。そして今後、フードによる治療に対しては許容できないだろう。(きちんとしていれば反応があっただろうものでも)
* 現在ではこれまでの特異的IgE検査では判断できなかった食物性アレルギーもリンパ球反応検査などの検査により判断できる可能性が出てきた。これらの検査については次回「アトピー性皮膚炎のはなし(2)」で。
このようにアトピー性皮膚炎かどうかをみていくにもきちんとした順序があるのだ。そして前述したとおりアトピーは遺伝的体質で一生、付き合っていく必要のあるものである。「その時だけかゆくなければそれで良い。」という治療にならないためにもちゃんとした判断、治療プランを考えていく必要があるだろう。